ゆうちょ銀行は、会社・社員の成長を促進するべく、一人ひとりが働きがいを持ち、いきいき・わくわくと働ける環境づくりに取り組んでいます。この取り組みの一環として、2025年1月10日、島田 由香氏(以下、島田氏)をゲストにお迎えし、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(「多様性・公正性・包摂性」、以下「DE&I」)推進イベント「ゆうちょDE&Iフォーラム 島田 由香氏×笠間社長トークイベント」を開催しました。
トークイベントは2部構成。第1部は島田氏によるセミナー、第2部は島田氏と笠間 貴之社長(以下、笠間)によるトークセッションを行いました。
第1部では、「DE&Iやエンゲージメント、そしてウェルビーイングがもたらす効果とは?」、「ウェルビーイングを高めるには?」等のテーマについて、島田氏にご講演いただきました。ワークや参加社員とのやり取りも交えながら、終始和やかな雰囲気で進みました。
島田 由香氏
YeeY 共同創業者/代表取締役
慶応義塾大卒業後、パソナを経て米コロンビア大大学院にて組織心理学修士号取得。日本GEを経て、2008年ユニリーバ・ジャパン入社。2014年より取締役人事総務本部長として「WAA」等独自の人事施策を実行するかたわら、2017年に株式会社YeeYを共同創業。
内閣官房 行政改革推進会議有識者議員をはじめ、内閣府、総務省、林野庁、観光庁、その他地方自治体等に有識者として招聘される。
「HRアワード2016」企業人事部門 個人の部 最優秀賞。
「国際女性デー HAPPY WOMAN AWARD 2019 for SDGs」受賞。
組織の成長にとってDE&Iやエンゲージメントは非常に重要だが、その根底にあるのがウェルビーイング。ウェルビーイングの定義は、「心身ともに健康で社会的によい状態」だが、自分(島田氏)風に言うなら「なんかいい感じ。いい調子って自分が思えること」。耳慣れしている言葉でも、自分の言葉で語れるようになってほしい。ウェルビーイングについて深く理解し、それを実践することで、会社や組織、チームだけでなく、家族や仕事、自分の人生そのものがよりよく変化していく。
ウェルビーイングの効果は大きい。ウェルビーイングが高い人は、健康で長寿、人間関係が良好、仕事のパフォーマンスが高く、レジリエンス(困難に対する回復力)も強いという研究結果がある。ウェルビーイングが高い人が多い会社は、生産性や創造性が"自然に"上がり、組織全体のパフォーマンスも‟自ずと”向上する。また、ウェルビーイングはスキルであり、自身が自分の状態を理解し、よい状態であるための行動を自分で選ぶことで高めていくもの。ぜひ、ご自身のウェルビーイングに責任を持ってほしい。
ウェルビーイングを高めるための5つの要素。これらの要素の頭文字を取った言葉、それが「PERMA」!
P (Positive Emotions) - ポジティブな感情を感じること。
E (Engagement) - 何かに没入し、前向きに関わること。
R (Positive Relationships) - 良好な人間関係を持つこと。
M (Meaning) - 自分の行動や人生に意義や意味を見出すこと。
A (Accomplishment) - 達成感や進歩を感じること。
島田氏オリジナルの日本語バージョンは「よし!たかい☺」。言葉自体が持つ肯定的なイメージによって、脳がよりポジティブに。
よ - よい感情(前向きな感情)
し - 主体的に関わる
た - 達成・熟練・成長を感じる
か - 関係性(よい人間関係)
い - 意義・意味
組織文化や風土の改革はコミュニケーションから始まる。本当のコミュニケーションを取るためには、「む・き・つ」つまり「向く」「聴く」「伝える」の3つの要素が重要。このプロセスをしっかりと行っている人が組織を変えていく。
む - 相手に意識を向け、心と体が一緒にいること
き - 耳と目と心を使って相手の言葉や表情を理解しつながること
つ - 言葉を相手に届け、意図通りに伝わっているかを確認すること
第2部では、「社長・ゆうちょ銀行にとってのウェルビーイング」や「社員のパフォーマンス向上を後押しする条件」、「人生に‟稲妻”が走った経験」など多岐に渡るテーマについて、島田氏、笠間が語り合いました。
島田 由香氏
笠間 貴之
斎藤 美香子
笠間:
島田さんとの対談に向けて、改めてウェルビーイングの本を読んだところです。本日島田さんのお話を聞いて、ウェルビーイングが、「なんかいい感じ」だということを、より深く理解することができました。明日から早速活かしていきたいと思います!
島田氏:
分かりにくいと言われるウェルビーイングですが、「なんかいい感じ」になるためのヒントは、実は皆さんの心の中にあります。自分らしさを失って自分じゃない何かになってやろうとしているとウェルビーイングとは言い切れないんですね。皆さん、今日身に付けているものってきっと「いいな」と思ったものですよね。そう、皆さんはすでにウェルビーイングのための行動をしているんですよ。
笠間:
プライベートも仕事もどっちも楽しむ。ずっと意識していることですが、日々を楽しく過ごしていくことがウェルビーイングにつながっていくんだと、今日改めて感じました。
島田氏:
やっぱり色々あると思うんですよ。思わぬアクシデントとか……ただ、「どうせやるなら楽しくやろう」って取り組んでいるうちに見出せるものも多いのではないかと思います。そして、それでも違う、楽しくできないって感じたときは、ちゃんと伝えることも大切ですね。
笠間:
ゆうちょ銀行社員にとってのウェルビーイングについては、一概には言えない部分はあるかもしれませんが、とにかく社員がこの会社のことを好きになり、やりがいや誇りを持って、この会社のために頑張りたいと思えるような会社にしていくことが、結果としてウェルビーイングの向上につながるのかなと。
4月に社長に着任してから、「まずは現場を見ないと」と思い全国の拠点を回っています。ゆうちょ銀行の社員は素直で真面目。本当に皆さん頑張っている。行くと元気をもらいますし、気付かされることも多いです。「絶対この会社よくしてやる!」って思いながら、日々やっています。
島田氏:
「ゆうちょのことを好きになってほしい」とのお話、素晴らしいですね!好きなことや得意なことをしていると、人はフロー状態=没入している状態に入りやすくなります。フロー状態に入ると、その人の能力や可能性が最大限に発揮されます。仕事をしているときにフロー状態に入ることができれば、最高の結果を出すことができます。そして、その結果が評価されることで、自分の存在意義や貢献を感じることができ、それがやりがいにつながります。やりがいを感じることで、さらに仕事に対する意欲が高まり、またフロー状態に入りやすくなります。社員一人ひとりの好きなことや得意なことにフォーカスすることが、社員のやりがいを生み出し、結果として会社全体のパフォーマンス向上につながるのです。
斎藤:
島田さんのお話からは、とてもパッションとエネルギーを感じます。何かきっかけがあったのでしょうか?
島田氏:
多分、生まれながらにして!ただ、それが加速された出来事はあって……皆さんは、自分のパーパスとは何かって考えたことありますか?パーパスは大いなる目的という意味で、自分がなんで生まれてきたのか、何のためにここにいるのかということ。私は稲妻と呼んでいるのですが、人生に衝撃的な、まさに稲妻が走るような出来事が起こったとき、「なぜ自分に起こったんだろう?どういう意味があるんだろう?」と、その出来事をきっかけに自分のパーパスを問い始めたときから、パッションやエネルギーが加速されたかもしれないですね。
斎藤:
笠間社長も何か稲妻が走ったエピソードはありますか?
笠間:
社会人になって一番衝撃的だったことは、最初に入社した会社が潰れてしまったこと。ある意味で、挫折からのスタートでした。逆に言うと、ゆうちょ銀行は預金基盤や顧客基盤が非常に安定していますが、この安定しているってことがどんなに素晴らしいことかを改めて感じました。これが私にとっての稲妻が走った経験かもしれないですね。
島田氏:
先ほどパーパスのお話をしましたが、自分自身のパーパスを問うための4つの要素として、挫折の経験、幼少期の自分、成功体験、そしてこの人生でやり遂げたいと思っていることがあります。幼少期の自分とありますが、10歳までの間にすごく夢中だったり憧れていたりしたモノ・コト・ヒトって、実はその人のパーパスとものすごく近いんですね。そして、その要素は必ず今の仕事とつながっているんです。ご自身のパーパスや志と、現在の仕事とのつながりを増やせれば増やせるほど、誇りやワクワク感や満たされている感じが生まれていくと思います。
斎藤:
本日のトークイベントでの気付きや学びが、参加者の皆さん一人ひとりの明日からのウェルビーイングにつながっていけばと感じます。最後にお二人から一言メッセージをお願いします。
島田氏:
今日のイベントのいいことは、対面・オンラインでこれだけの人数の方が同じキーワードを聞いたということ。感じ方は違うかもしれないけれど、同じキーワードを共有できているというとことがすごく意味のある大切なことです。
とにかくご自分のウェルビーイングを一番大事にしてください。自分のウェルビーイングに責任を持っていい状態でいるということを選ぶ。誰かがそれを選ぶこともまた尊重する。それを続けていかれると、ゆうちょ銀行はすごいことになるんじゃないかなと思います。
笠間:
先ほど、幼少期の経験が今の仕事やパーパスにつながっているという話を聞いて、実は私は小学生のころ、人前で喋れなかったのですが、そんな自分を変えてくれた恩師のこと、その恩師への感謝の気持ちを思い出しました。そのときの経験が現在につながっていると聞いて、確かに「あ、なるほど」と。何が言いたいかというと、そういったきっかけや原点となる出来事が社員一人ひとりにあると思っていて、だからこそ、そういった力を引き出すためにDE&Iが必要だということです。
今日参加された皆さんは、ぜひ各拠点の核となって今日の熱量を伝えていってください。それが会社全体に波及していくような、そういった組織にしていきたいと思っています。皆さん、素直で真面目に頑張ってまいりましょう。