ゆうちょ銀行は、これまでのD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)の視点に加えEquity(公平、公正性)を意識することで、すべての社員が個性を活かして活躍できる環境整備に取り組んでいます。
この取り組みの推進の一環として、2024年9月25日、スプツニ子!氏を講師にお迎えし、常務執行役以上の経営メンバー(以下「経営メンバー」)との「ゆうちょDE&Iダイアログ」を開催しました。
講義では「Equity(公平、公正性)とは何か?」、「構造的な差別※」、「Equityを実現するための企業構造デザイン見直し」、「イノベーションやリスク管理におけるDE&Iの重要性」等について、経営メンバーの視点を意識し、スプツニ子!氏に講義をしていただきました。
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構造的な差別とは、差別する意識がなくても、社会や企業の構造によって特定の性別や人種などにとって不利な状況が生まれてしまうこと。
スプツニ子!氏
MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボ助教授、東京大学大学院特任准教授を経て、現在、東京藝術大学美術学部デザイン科准教授。2017年に世界経済フォーラム「ヤング・グローバル・リーダー」、2019年にTEDフェロー選出。第11回「ロレアル‐ユネスコ女性科学者 日本特別賞」、「Vogue Woman of the Year」、日本版ニューズウィーク「世界が尊敬する日本人100」 選出等受賞。2019年、株式会社Cradleを設立、代表取締役社長就任。
講義の後、DE&I推進を通じた企業の成長について、経営メンバーとスプツニ子!氏が共に考え、それぞれの意見を共有しました。
経営メンバー:
女性活躍推進が男性にとって逆差別ではないかと言われがちな点について、これは「構造的な差別」の是正であり、逆差別ではないということは理解できます。一方で、女性管理職から、「実力で管理職になったつもりだが、周囲からは定量的なKPIがあるために数字ありきで管理職になったのではないかと見られることがある」との声も聴きます。
スプツニ子!氏:
社会の中に「構造的な差別」があることを知っているか否かによって、感じ方が異なります。「構造的な差別」は、資本主義の話であれば理解しやすいと思いますが、ジェンダーになると分かりづらくなる。しくみを変えていくためには自然体では難しい部分があります。定量的なKPIを意識することは多いと思いますが、「構造的な差別」について丁寧に説明し続けることで、理解を浸透させていくことが大切だと思います。
経営メンバー:
DE&I推進はその企業の成熟度にあわせた対応をすることが大事だと考えています。取り組みが進んでいる企業もジェンダーコンシャスネス(ジェンダー意識)からジェンダーフェアネス(ジェンダー公正)の段階に進んだときに、企業としてどのような対応が必要となるでしょうか。
スプツニ子!氏:
取り組みが進めば、社会の成熟度に応じて新たな課題が発生し、それに対する反発も発生します。
約10年前の日本企業では、女性が出世するためには、いわゆる昭和のサラリーマン男性のような働き方を求められていましたが、それでは多くの女性にとってのロールモデルになりえませんでした。現在は構造が変わってきており、男性も家事・育児に参加することが増えてきているので、企業は仕事の構造、働き方を変えていくべきフェーズになってきています。
これは女性に限った話ではなく、男性が子どもの誕生のタイミングで働き方を見直して転職するなど、社会的に人材の流動性が高まっています。企業としては、人材流出といったロスを防ぐためにも、働き方のデザインや構造を見直して、AI活用やDX推進により、生産性をアップさせていくことが、今後重要な対応の一つになると思います。
経営メンバー:
生活は生活、仕事は仕事と明確に分けられないテーマがダイバーシティと考えています。それは女性だけの課題でなく、性別以外の要因においても、多様性が大事にされる社会になり、それが仕事に織り込まれていくことによって、企業も成長できると考えています。
一方、自身が育児していたころと比べ、環境は大きく変わってきたものの、意識の方はやはりそこまで変わっていないと感じています。DE&I推進においては、自分の育ってきた環境・価値観・プライベートな経験値が影響すると思いますが、未経験で実感が沸きにくい環境において、経営メンバーがリーダーシップを発揮するためのアドバイスをお願いします。
スプツニ子!氏:
DE&Iが進んでいる世界を自分の目で見て、直感で感じることが大事だと感じています。グローバルな視点で見ると、今の日本企業におけるDE&I推進は、約30年前の1990年代にアメリカで議論されていたトピックが議論されている感覚です。さまざまなリーダーや他企業との交流会などを通じて新たな気付きを多く得ることで、実際にDE&Iを実現している世界があることを意識しながらリーダーシップを実践していくとよいのではないでしょうか。
スプツニ子!氏から、令和5年度なでしこ銘柄にゆうちょ銀行が選定されたことは、DE&I推進において大きなプラス要素であるとのコメントとともに、今後は国内のみでなくグローバルな視点も持ち、さらに取り組みを加速させていくようアドバイスをいただきました。
ダイアログを進める中で、時代や環境の変化によって、DE&I推進に必要な対応が変化していくことを再認識できました。
そして、参加者一同、一人ひとりの社員が個性を活かし、働きがいを感じられるよう、社内外の変化を敏感に捉えながらリーダーシップを発揮していく思いを強くしました。