ゆうちょ銀行
取締役兼代表執行役副社長
矢野 晴巳
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特集サステナビリティ担当役員メッセージ

ゆうちょ銀行は創業以来、誰もが公平に利用できる社会基盤の構築に努めてきました。現在は、当行の企業価値向上と社会課題解決の両立を図る「ESG経営」に取り組んでいます。その取り組みと今後の目標について、サステナビリティ推進の担当役員である矢野晴巳が語ります。

基本的な考え方

サステナビリティを推進するうえで重視していることを教えてください。

お客さまと社員の幸せを目指し、社会と地域の発展に貢献することです。それが私たちの社会的存在意義(パーパス)です。

ゆうちょ銀行は1875年に政府が郵便為替事業を開始して以来、創業者・前島密の精神を受け継ぎ、誰もが公平に利用できる金融インフラの構築を目指してきました。2007年に民営化した後も、日本全国あまねく誰にでも安心・安全な金融サービスを提供するために事業を展開していくという姿勢は、変わることはありません。現在、約1億2000万口座という、日本の総人口に等しい口座数を保有するゆうちょ銀行は、日本全国のお客さまと社員の幸せを目指し、社会と地域の発展に貢献することを自らの社会的存在意義(パーパス)と認識しています。

ゆうちょ銀行は、国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)への貢献も重視し、事業活動を通じてサステナブルな社会の実現に取り組んでいます。2020年度には経営企画部内にサステナビリティ推進に関する専門組織(現サステナビリティ推進室)を設け、経営とサステナビリティを一体で進める体制を構築しました。その中で、私はサステナビリティ推進を担当する役員として、経営会議の諮問機関であるサステナビリティ委員会の委員長を務めています。委員会では、環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)など、当行が事業を通じて取り組むべきサステナビリティに関するさまざまなテーマについて議論をしています。委員会で立案された重要施策は、経営会議を経て取締役会において議論のうえ決定され、取り組みの進捗や成果がモニタリングされています。

ゆうちょ銀行は2021年度に、新たな中期経営計画(2021年度~2025年度)をスタートしました。自らのパーパスに立ち返り、果たすべき3つのミッションを明確化したうえで、企業価値向上と社会課題解決の両立を図る経営(ESG経営)を目指しています。なお、3つのミッションには、SDGsの基本理念でもある「誰一人取り残さない」という考えが貫かれています。そして、このミッションを達成するために、ステークホルダーにとっての重要性と、事業活動によるインパクトの2つの側面から、社会課題のうち特に取り組むべき重点課題(マテリアリティ)を4つ定め、その解決に向けた戦略と、達成すべき目標KPIを明示しています。サステナビリティ担当役員としての私の役割は、中期経営計画で打ち出した重点課題(マテリアリティ)に、社員一人ひとりが日々の業務を通じて取り組むことが、ESG経営の推進にほかならないということを、会社全体にしっかりと落とし込むことだと考えています。この観点から、2022年度に、全店所において「SDGs宣言」を策定する取り組みを開始しました。各店所において、4つの重点課題(マテリアリティ)と紐づいた自分たちの「SDGs宣言」と、その達成に向けた具体的な取り組みを考えてもらい、実際に日々の業務を通じて、それを実践してもらう試みです。今後もこうした日々の業務に則した取り組みを通じて、全社員が一体感を持ったサステナビリティ経営を進めます。

3つのミッション

パーパス(社会的存在意義)

お客さまと社員の幸せを目指し、社会と地域の発展に貢献します。

※日本郵政グループ経営理念

経営理念

お客さまの声を明日への羅針盤とする「最も身近で信頼される銀行」を目指します。

ミッション

  • 日本全国あまねく誰にでも「安心・安全」で「親切・丁寧」な金融サービスを提供する。
  • 多様な枠組みによる地域への資金循環やリレーション強化を通じ、地域経済の発展に貢献する。
  • 本邦最大級の機関投資家として、健全で収益性の高い運用を行うとともに、持続可能な社会の実現に貢献する。

企業価値の向上とSDGs等の社会課題解決の両立(ESG経営)

4つの重点課題(マテリアリティ)

日本全国あまねく
誰にでも「安心・安全」な
金融サービスを提供
地域経済発展への
貢献
環境の
負荷低減
働き方改革、
ガバナンス高度化の推進
  • 3 すべての人に健康と福祉を
  • 9 産業と技術革新の基盤をつくろう
  • 10 人や国の不平等をなくそう
  • 16 平和と公正をすべての人に
  • 8 働きがいも経済成長も
  • 9 産業と技術革新の基盤をつくろう
  • 10 人や国の不平等をなくそう
  • 11 住み続けられるまちづくりを
  • 13 気候変動に具体的な対策を
  • 14 海の豊かさを守ろう
  • 15 陸の豊かさも守ろう
  • 17 パートナーシップで目標を達成しよう
  • 3 すべての人に健康と福祉を
  • 4 質の高い教育をみんなに
  • 5 ジェンダー平等を実現しよう
  • 10 人や国の不平等をなくそう

取り組み・目標

それぞれの重点課題(マテリアリティ)について、取り組みの進捗を教えてください。

いずれも「ゆうちょらしい」やり方で、解決に向けた戦略を着実に推進しています。

重点課題(マテリアリティ)の1つ目、「日本全国あまねく誰にでも『安心・安全』な金融サービスを提供」については、安心・安全を最優先に、すべてのお客さまが利用しやすい「デジタルサービス」の拡充に努めています。ここでの大きなポイントは、「リアルとデジタルの相互補完」という「ゆうちょらしい」やり方で拡充を進めていることです。具体的には、全国の郵便局ネットワークを活用し、社員が親切・丁寧にデジタルサービスの利用をサポートすることで、現在不慣れな方も含め、最終的にすべてのお客さまが安心してデジタルサービスをご利用いただけるよう取り組んでいます。たとえば、中期経営計画では、2025年度までに、通帳アプリの登録口座数を1,000万口座まで増やす目標KPIを設定していますが、2022年3月末現在、登録口座数はすでに481万口座となっています。

2つ目の「地域経済発展への貢献」は、ゆうちょ銀行のパーパスそのものに含まれている重点課題(マテリアリティ)です。ここでもゆうちょ銀行は、貸出(デット性資金)ではなく、ファンド出資(エクイティ性資金)という「ゆうちょらしい」やり方で、地域への資金循環に取り組んでいます。たとえば全国各地の金融機関と連携し、「地域活性化ファンド」への参加を進めております。2022年3月末現在、累計39件のファンドに出資しており、2025年度までに累計50件の出資を目指しています。また、2018年に設立した連結子会社であるJPインベストメント株式会社を通じたエクイティ性資金の循環にも注力しています。同社はすでに3つのファンドを組成しており、特に2022年4月に組成した「地域・インパクト1号ファンド」は、地域経済の活性化、SDGs等の目標達成に向けた社会的インパクトの創出に資する企業や事業への投資を行い、サステナブルな社会の確立を目指すファンドです。

3つ目の「環境の負荷低減」については、グローバルスタンダードであるTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に沿った取り組みを強化しています。特に、ゆうちょ銀行は、有価証券運用(国際分散投資)を業務の大きな柱とするビジネスモデルであることに鑑み、GHG(温室効果ガス)排出量につき、自社排出分(Scope1、2)よりも投資先排出分(Scope3)がかなり大きいという特徴があります。このため、Scope1,2の排出量を2030年度までに2019年度比で46%削減する目標(注:2023年3月に削減目標を▲46%から▲60%に引き上げ)を掲げているほか、Scope3(カテゴリ15:投資)を含めたGHG排出量を2050年までにネットゼロにする目標を掲げ、その達成に向けて着実に歩みを進めています。また、有価証券運用業務を通じて、サステナブルな社会の実現に貢献する観点から、グリーンボンドなど「ESGテーマ型投資」の残高拡大を進めており、当初2兆円としていた2025年度末の残高目標を4兆円に引き上げ、脱炭素社会実現に向けた取り組みを加速しています。

4つ目の「働き方改革、ガバナンス高度化の推進」については、「お客さまと社員の幸せを目指し、社会と地域の発展に貢献する」というゆうちょ銀行のパーパスに明記されているとおり、社員の「幸せ(ウェルビーイング)」向上という視点から取り組んでいます。なお、その際には、ダイバーシティ・マネジメントが重要と考えています。社会構造の変化に伴うお客さまのライフスタイルの多様化により、お客さまがゆうちょ銀行に求めるニーズも多様化しており、それにお応えするためには、サービスを提供するゆうちょ銀行側も多様性を備えていなければなりません。そうした認識のもと、多様な属性や感性をもつ社員一人ひとりがゆうちょ銀行のパーパスを共有しつつ、自律的・主体的に働き、キャリアを形成していける環境の整備に努め、ウェルビーイングを実感できる会社にしていきたいと考えています。なお、ゆうちょ銀行は、2022年3月末現在、社員数に占める女性比率が約43%と比較的高く、女性活躍推進にも力を入れています。女性活躍に優れた企業として「なでしこ銘柄」や「MSCI日本株女性活躍指数」に選定されるなど、外部からも高い評価を受けていますが、さらに取り組みを強化します。たとえば、現状、女性管理職比率は16.6%ですが、新卒採用においては女性の割合のほうが高いため、定着をしっかりと図り、2026年4月1日までに女性管理職比率を20%以上に高めたいと考えています。

矢野 晴巳代表執行役副社長の写真

今後の展望

中長期的な視点から、課題および今後の方針を教えてください。

ステークホルダーの皆さまに、ゆうちょ銀行への理解や共感を深めていただけるよう、積極的な情報発信と対話に努めます。

ゆうちょ銀行は子どもから大人まで幅広い層の皆さまにとって、最も身近な銀行であると考えています。たとえば、私も子どものころ、お小遣いをもって郵便局(ゆうちょ銀行)に預けに行った経験がありますが、子どもが行っても違和感がない、極めてユニークな銀行ではないでしょうか。このように、「生活の中に溶け込んでいる銀行」「あまねく誰にでも安心・安全な金融サービスを提供する銀行」という感覚を維持しながらも、社会構造の変化にあわせてビジネスモデルを変革していく必要があると強く思っています。

中長期的には、前述のとおり、すべてのお客さまが利用しやすいデジタルサービスの拡充に向けたビジネスモデルの変革が重要であると考えています。少子高齢化の加速や単身世帯の増加、コロナ禍による非接触サービスへのニーズの顕在化などの社会構造の変化に対し、デジタルサービスの拡充は欠かせない取り組みです。また、「地方のデジタル化」は、日本政府もその推進を基本的な方針の一つとして掲げている日本全体の課題でもあります。ゆうちょ銀行は、「リアルとデジタルの相互補完」を通じたビジネスモデルの変革により、金融サービスのデジタル化を、誰一人取り残さないかたちで達成すべく、さまざまな取り組みを加速していきます。

今後は、個人投資家を含む国内外の投資家の皆さまにゆうちょ銀行の特色あるビジネスモデルや、公共性と企業価値の両立を目指す姿勢を理解いただくことがより一層重要になります。また、中長期的にサステナビリティを推進し、目標を達成するためには社内外のさまざまなステークホルダーとの協力が欠かせません。そうした認識のもと、ゆうちょ銀行への理解や共感を深めていただけるよう、これまで以上にわかりやすく積極的な情報発信に努めるとともに、ステークホルダーの皆さまとの建設的な対話に取り組んでまいります。

2022年11月

ゆうちょ銀行 取締役兼代表執行役副社長

矢野晴巳

1984年日本興業銀行入行。みずほコーポレート銀行管理部室長、みずほ証券総合企画部経営調査室長を経て2010年経営調査部長。2011年にゆうちょ銀行コーポレートスタッフ部門調査部長に就任。以降、執行役、常務執行役、専務執行役、執行役副社長を経て2024年から現職。

※掲載当時の役職:専務執行役