「相続」とは、亡くなった人(被相続人)の財産をその家族(相続人)が譲り受けることです。近年、相続に関して親子・きょうだい同士が裁判で争い、「争族」問題に発展するケースが頻発。さらに2015年の税制改正で基礎控除額が大幅に引下げられており、お金持ちにしか関係がないと思われていた相続税問題が、より多くの人が当事者となり得る問題としてクローズアップされています。
- 相続人間での「誰が、どの財産を、どれだけ相続するか」の争いが頻発しています。
- 相続税制改正により、思いもよらぬ高額の相続税が課され、その納税資金調達のために相続人の生活が圧迫される懸念がクローズアップされています。
2015年の税制改正で基礎控除額が引下げられました。相続税の非課税枠である基礎控除額は「5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)」でしたが、2015年1月以降に発生する相続からは「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」に減額されています。例えば、法定相続人が妻と子ども2人の場合、基礎控除額は8,000万円から4,800万円に。従来は相続税が発生しなかった資産規模の人にも、相続税がかかる可能性があるということです。
相続税の対象となる「遺産(課税遺産総額)」には、現金・預貯金だけでなく、土地・建物などの不動産や、書画・貴金属・骨董品なども含まれます。特に土地は評価の方法が複雑で、生半可な知識では太刀打ちできないため、相続対策をしっかりと施すことが重要なのです。
- 基礎控除額の引下げ(妻+子ども2人で相続財産が1億円の場合)
とかくもめがちな相続問題。無用なトラブルを避けるために生前対策をしっかりしておきましょう。具体的には、次の方策が考えられます。
- ① 遺言を書く
- ② 財産リストを作っておく
- ③ 生命保険に加入する
- ④ 生前贈与、養子縁組などを行う
- ⑤ 不動産購入など、資産の組み替えを行う
「争族」に発展する原因は不動産やお金の分け方について争いが紛糾することにあります。法律で定められた「法定相続分」の一例を下図に示しましたが、これは強制的なルールではありません。
財産の分け方は「遺産分割協議」で話し合いますが、遺言が優先されます。遺言がなくてもめるパターンと、遺言があることでもめるパターンがあり、遺言にまつわるトラブルも非常に多いのです。
ただし通常は、遺言がある方が遺産分割協議はスムーズに進みます。遺言の内容が完璧ではなくとも、要件を備えた有効な遺言を作成することは「争族」の予防につながります。分からないことがあれば、弁護士・税理士・司法書士などの専門家に相談しながら、まずは一度遺言を作成してみましょう。
- 法定相続分の計算方法