取締役兼代表執行役社長 池田 憲人 / 執行役 ダイバーシティ推進部長 牧野 洋子
  1. ホーム
  2. 社会
  3. 社員
  4. 役員対談

役員対談ゆうちょ銀行のダイバーシティ戦略

ゆうちょ銀行は専担役員によるダイバーシティ推進部を設置し、女性活躍をはじめとしてダイバーシティ向上に向けたさまざまな施策を展開してきました。取締役兼代表執行役社長・池田憲人と執行役・ダイバーシティ推進部長の牧野洋子がこれまでの歩みを振り返り、今後の方針・戦略をご説明します。

ダイバーシティに関する認識変化する社会で企業としてサステナブルに成長していくために不可欠

牧野:
ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みは、日本全体においても、当行においても、2015年の女性活躍推進法の成立が大きなきっかけとなっています。そのため、女性管理職の増強、育児や介護の環境整備、男性の育児休業取得促進等の取り組みが主流でした。こうした個々の対応を進めるのはもちろん重要です。しかし、一番大切なのは、「ダイバーシティは企業の維持・成長に欠かせない」という認識を持つということです。“企業は一つの生命体“であり、サステナビリティの観点でも、想定外の種々のリスクに備えなければならない時代にあって、ダイバーシティを確保できない限り生き残っていけないと思うのです。
池田:
その通りだと思います。歴史を振り返ってみれば、戦後の日本は、建設業や製造業を中心に男性を主な働き手とし、一方で家事や育児は専業主婦の女性が担うというかたちをとってきました。それによって企業や行政など、社会のあらゆる分野が高い生産性を維持することが可能になり、奇跡とも言われる高度経済成長が実現しました。しかし、ここ30年ぐらいの間に、その奇跡を生んだ日本型の社会構造や企業運営が立ちいかなくなってきました。経済・金融環境の変化やIT化の進展、そしてグローバリゼーションによる産業構造の変化もあり、企業経営や人材育成の手法もがらりと変わりました。

こうした環境変化は今後もますます加速していくはずです。そうした中で、正しい経営判断を下し、イノベーションを実現していくためには、多様な人々を採用・登用し、多彩な知見とスキルを経営に取り込んでいく必要があります。顧客対応を例にとれば、当行は日本全国に窓口をもち、多種多様な人々のニーズにしっかりと応えていく必要があります。そうしたニーズに応えられる多様な人材を維持し、ダイバーシティを尊重する風土を醸成し続けることは、重要な経営課題のひとつであると認識しています。
取締役兼代表執行役社長 池田 憲人

これまでの取り組みの振り返り管理職の意識改革を推進することで全社のマインドセットを変革

牧野:
当行では、2016年度にダイバーシティに関する取り組みを本格化し、以降、女性活躍や障がい者雇用、LGBTへの対応など、さまざまな活動を展開してきました。なかでも特に力を注いできたのは管理職の意識改革です。具体的には、研修などを通じてイクボス※を育成する「ゆうちょイクボス養成」活動を進めてきました。つまり、まずは高度経済成長期のマネジメント手法で組織人として育てられた上司が変わることで社内の風土、組織全体のマインドセットを行うことが不可欠と認識したのです。実際、2020年度に実施した全社員へのアンケートの結果では、「上司に良い変化があった」との回答が7割にも及び、大きな成果があったと言えると思います。

こうした活動の結果、女性管理職比率は着実に向上し、2016年には10.9%だった同比率が15.7%(2021年4月時点)にまで向上しました。障がい者雇用率も高い水準で維持できており、法定雇用率2.3%を大きく越える2.74%(2020年6月時点)となっています。また、LGBT等の性的マイノリティに関して企業の取り組みを評価する「PRIDE指標」においても3年連続で「ゴールド」の評価をいただきました。

※ 部下のワーク・ライフ・バランスを考え、部下のキャリアと人生を応援しながら、組織の業績も結果を出しつつ、自らも仕事と私生活を楽しむことができる上司。

池田:
数値的な成果ではないのですが、私自身がこれまでの取り組みを振り返って印象に残っているのは、「ゆうちょダイバーシティ・フォーラム」の活動です。これは、本社やエリア本部、貯金事務センター、店舗などの社員の代表者からなる「ダイバーシティ・コミッティ」のメンバーを召集して年に1回程度開催しているイベントで、昨年はオンラインで約240名の社員が各地の課題や解決策を共有しあったり、私への提言を行ったりしています。当行は明治の創業以来、有人の離島が400以上もある全国ネットワークの生活金融インフラを維持してきた金融機関です。海沿い、山間、過疎・過密など気候も風土も実に変化に富んだ地形を持つ国です。多種多様なお客さまの生活に向き合いながら、顧客接点業務を担う社員が、私をはじめとする経営陣に、自分自身では思いつかないようなアイデアを与えてくれるという意味で、やはり当行の経営にはまだまだダイバーシティの推進が必要だと実感させてくれています。
執行役 ダイバーシティ推進部長 牧野 洋子

今後の目標・方針経営計画のKPIとしてダイバーシティ関連指標を掲げ、イノベーションを活性化

池田:
これまでの取り組みが一定の成果をおさめたとはいえ、まだ満足すべきではないと思っています。そこで、2021年度にスタートした中期経営計画では、2025年度の目標として「女性管理職比率20%」、「育児休業取得率100%」、「障がい者雇用率2.7%以上」を設定しました。数値にだけこだわるわけではありませんが、ダイバーシティ推進を重要な経営課題と位置づけていることを社内外に明確に示すという意味でも、また、進捗を測定していくためのKPIとしても必要だと考え、目標を設定しました。

また、女性の登用については、将来的には役員の女性比率が4割以上となることが必要だと考えています。しかし、一気にそこに到達することは困難ですから、着実に管理職や役員候補を増やしていくことを目指します。そのためには、全ての社員が働き続けられる環境を整えることが大事だと考えています。
牧野:
各種制度改正や施策によって、女性が育休後も働き続けられる環境は整いつつありますが、今後は激変する金融業態やライフスタイルに合わせ、よりクリエイティブな発想でチャレンジする社員の育成支援も重要だと思います。いま日本は地方創生や地域活性化など、国をあげて多様性を活かす取り組みが展開されていますが、当行の中にもまだまだ掘り起こされていない、社員の潜在的なダイバーシティ&インクルージョン能力が眠っているように感じています。そんな能力の活性化こそが社員の働きがいや会社の成長にも繋がっていくと思います。
池田:
私は「方針を明確にすること」、「万一の時に先頭にたつこと」、そして、「社員が働きやすい環境を整えること」を企業のリーダーとしての責務であると考えていますので、働きやすさの向上には率先して取り組んでいきたいと思います。

また、それと並んでもうひとつ重要だと考えるのが、「働きがい」です。高度経済成長の時代にキャリアを築いた社員はたくさんの成功体験を得やすかったと思います。日本経済の成長が鈍化してからは、多くの社員があまり成功体験を持てず、働き続けるモチベーションを維持しづらい状況にあったのではないかと考えています。それぞれが持つ能力を十分に発揮していきいきと働き、成功体験をたくさん積んでもらえるような環境を、今まで以上に意識して整えていきたいと思います。

また、2019年度に発足したサービス向上委員会には、組織文化・風土改革分科会を設置し、メンバーの半数程度は女性を登用し、お互いを尊敬し合う文化を根付かせることと、情報共有が徹底される組織への変革に取り組んでいます。こうした取り組みが進むことでダイバーシティ推進が加速し、ひいては「お客さま本位」につながる新たなイノベーションが生まれると考えています。
牧野:
民営化以降の当行の特徴として、店舗だけでなく企画部門においても女性社員の採用者数を高めた点があります。今その女性たちが出産・育休を経て、逞しくなって職場に戻って来ています。そして昨年あたりからは男性社員も積極的に育休を取得するようになり、子育てを通じた様々な体験をもとに、視野を広げ人間的に成長している社員も少なくありません。また一緒に同じ職場で働いている障がいのある社員やLGBT等の社員の感性や考え方からも学ぶことが多いと感じています。従来の業務にどう社員を当てはめるかという考え方から、個性ある社員の能力を業務の中でどう発揮してもらうかというマネジメントがとても重要になって来ていると思います。
池田:
その通りだと思います。そういった点も含めて、ダイバーシティ&インクルージョンを通じてイノベーションを活性化させていくことが、これからの成長戦略の土台になると考えています。

取締役兼代表執行役社長

池田 憲人

1970年、横浜銀行に入行し、取締役、代表取締役などを務める。2003年に足利銀行の代表取締役頭取、2012年東日本大震災事業者再生支援機構の代表取締役社長などを経て、2016年からゆうちょ銀行取締役兼代表執行役社長。

執行役 ダイバーシティ推進部長

牧野 洋子

1988年、郵政省に入省し、三鷹井の頭郵便局長に就任。局長業務の傍ら、大学院に学び、2005年3月に修士号を取得。その後2007年にゆうちょ銀行執行役に就任。広報部長、東京エリア本部長を経て、2016年からダイバーシティ推進部長。